私がオーガニックコスメと出合ったのは、ビューティサイエンティストとして独立した2008年ごろ。とある知人に、オーガニックコスメブランドを紹介していただいたのがきっかけです。
前職のアルビオン時代から植物が持つ類まれなるパワーには注目しており、ナチュラルコスメへの関心は高かったのですが、独立後、さまざまなブランドの新製品発表会に出席すると、ブランドならではのこだわりを聞く機会が増えました。
その中で、ブランドの歴史や原料の無農薬栽培への並々ならぬ熱意を目の当たりにするにつれ、オーガニックとは「科学ではなく哲学」なのでは、と思うようになりました。
原料となる植物を無農薬で栽培することや、環境のために配慮しているなど、オーガニックコスメを名乗るためには多種多様な条件があり、科学の視点から見ると一見古臭いようにも感じます。
しかし、このこだわりこそが哲学であり、作り手が純粋な想いを持っていることに気づき、敬意をもって製品と向き合うようになりました。今もその姿勢は変わりません。
オーガニックコスメの昔と今
正直なところ、私がオーガニックコスメに出合ったころはコスメとして感触はよいとは言えず、ビジネス的には難しいのかなと思っていました。使える原料は少なく、環境へも配慮しなくてはならない、となると感触までもよいものをつくるのは大変なのは重々承知しています。
それから10年以上が経ち、技術が進歩したことで、ケミカルなコスメとも遜色ないくらい使い心地がよいものが増えているように感じます。
オーガニックコスメ認証と市場の拡大
また、市場においてオーガニックの認知度が高まったことも、使い心地の進歩に繋がっていると思います。
欧米では、「エコサート」や「コスメビオ」、「コスモス」などの認証機関があり、植物原料の〇%以上がオーガニック原料である、化学原料は全体の〇%しか使用していない、などさまざまな基準をもうけています。
しかし、日本では長い間オーガニックコスメの基準が曖昧でした。そのため、日本独自の認証機関があることで、よりオーガニックコスメの市場が拡大するのではという思いからJNOCAの考えに賛同しています。
もちろん、すべてのブランドがストイックにオーガニック認証取得の道を選ぶべきとは思いません。メーカーの独自性や、認証を取る姿勢を応援したいなと思います。
オーガニックコスメとSDGsの関係
さらに、オーガニックコスメとは切っても切れないSDGsとの関係にも注目しています。
SDGsとは持続可能な開発のため国際目標で、17個の目標が定められています。
国際目標と聞くとすごく難しいものに思えますが、「フェアトレード原料を選択する」「環境に配慮し、プラスチックのパッケージを極力減らしたり過剰な包装を見直したりする」といったところから取り組むことができます。
つまり、「オーガニックコスメを選ぶ」ことで、小さなことかもしれませんが社会問題の解消に繋がり、SDGsにも貢献できるのです。オーガニックコスメとSDGsの関係は、こちらの連載コラムの中で別の機会にじっくりお伝えできればと思います。
これからのオーガニックコスメに期待すること
オーガニックコスメを世に送り出しているブランドの歴史や想い、地球への配慮などすべてをひっくるめて、哲学だとお伝えしましたが、もっと簡単に言うとストーリーだとも言えます。
さまざまな制約や地球環境への配慮があるなかで、多くのブランドは「敏感肌で悩む母のために、肌の本来の力をサポートして負担なく美肌に見せる化粧品をつくった」「植物のパワーで肌だけでなく心までも健やかに整える」などのストーリーに基づき、こだわりを盛り込んだコスメを続々と世に送り出しているのです。
オーガニックが最高でそれ以外はよくない、オーガニックコスメとケミカルコスメを比べてどっちが勝ちでどっちが負け、というわけでなく、「ブランドのストーリーやこういった考え方もあるよ」というのを知ってほしいのです。
科学とオーガニックコスメは共存できると思います。現にオーガニック原料を使用しながら、最先端の科学技術を搭載しているコスメも数多く発売されています。
私自身も哲学や熱い想いが明確に出ているブランドに注目していますし、そういったところに共感してコスメを選ぶことで、満足度の高いコスメと出合うことができると思います。
【ブランド哲学からオーガニックコスメを選んでみては】
ブランドの持つ哲学に少しでも共感したならば、ぜひ一度オーガニックコスメを手に取ってみてはいかがでしょうか。
コスメを選ぶ際にこういった点に着目してみると、また違った視点でコスメを見ることができ、新たな発見ができるかもしれません。
>>【vol.2】『私が思うオーガニックコスメの考え方|オーガニックコスメに欠かせないものとは』
>>【vol.3】『オーガニックコスメが秘める美容の力とは?』
>>【vol.4】『オーガニック・ナチュラルコスメとSDGsの関係』
>>【vol.5】『化粧品メーカー・生活者ができるサステナブルな取り組み』
>>【vol.6】『自分に合ったオーガニック・ナチュラルコスメの選び方とは』
■ナチュラルコスメ・オーガニックコスメの目印になる、ナチュラル・オーガニックコスメ認証JNOCA(ジャノカ)についてはこちら
【日本ナチュラル・オーガニックコスメ協会JNOCA(ジャノカ)】
この記事を書いた人
PROFILE
【JNOCA協会顧問】ビューティサイエンティスト 岡部 美代治
(株)コーセーの研究所を経て(株)アルビオンにて商品開発、マーケティング等を担当、数多くのヒット商品を手がける。2008年4月独立、現在は美容コンサルタントとして活動。商品開発アドバイス、美容教育アドバイスを行う他、講演・セミナーの依頼や雑誌取材も多い。化粧品の基礎から製品化までを研究してきた経験をもとに、スキンケアを中心とした美容全般について正しい情報を発信している。
〉公式サイトはこちら
〉著書『ムダ美容をやめればキレイになる』